Human Report

人間らしさを追求するブログです

自分の感覚を信じてみる

先日、保険会社を訪れた。
募集企画にかける保険の相談だ。
相談しながら、頭に浮かぶ一文のことを考えていた。

 

『野外での活動は、安全に十分注意して行いますが、小さな怪我をする場合がありますこと、ご理解の上ご参加いただきますようお願いします。』


自然学校で当たり前のように使われてきたこの一文に強烈な違和感を覚えつつあった。これが参加者に受け入れられる限り、おとなとこどもは双方“見張り合う”立場を抜け出せない。活動するのはこどもだが、主語はおとなのこの一文。こどもは無謀な挑戦を自らつかみにいく勇者であるにも拘わらず、この文にはその勇気を委縮させてしまう存在としてのおとなが際立っているように感じる。


PL法が適用された当時、巷の商品には注意を喚起する文章が登場した。一見親切にもとれる注意の背景には、いつともわからない攻撃に対する恐怖心がある。恐怖心が蔓延する世の中には過剰な注意喚起が溢れかえり、やがてそれが当然のこととして社会に浸透し、懐疑的な視線を送り合う冷たい社会が地球を包む。はたして大げさだろうか?法律をつくるのは国会ではなく人間の意識だ。「もしも」のことを恐れている限り、「今」を勇敢に生きることはできない。いざというときの窮地を救うのは、お金でも法律でもなく、それをくぐり抜けた「どうにかなるさ」という楽観意識だ。

もし書くとすれば、こんな感じがいいと思い直している。
『怪我もケンカも、経験すべてがこどもに必要な学びです。その機会をひとつとして奪わぬよう、寛大に見守っていただきますようお願いします。』


f:id:ikiikito:20150919135619j:plain

自信とは、「自分を信じる」ことである

賞味期限を気にせず、なめてみて(あるいは、嗅いでみて)確かめる人が私の周りには結構いる。私もそうだ。おかげで、もったいないことしたー!ということが少なくてすむ(笑)

テレビの天気予報で、「明日は今日より一枚多く着るとよいでしょう。」とか、「マフラーがあるとよいかもしれません。」などのコメントに、余計なお世話だ!と叫びたくなる。自分の体を守るのは、自分の感覚でしかないのに。

寒い冬、半袖で走り回るこどもを見ると、驚くというよりどこか安心する。「冬は寒い」という常識ではなく、「動くと暑い」という体感覚。この感覚に生きる姿に、安心するのかもしれない。

普段意識せずとも、“誰かに言われたこと”よりも、“自分”を信じて動くことは誰にでもある。自信とは、その積み重ねでしかたくわえることはできないものなのだと思う。

こどもは「守られたい」のではなく「愛されたい」と思っている

こどもがいない私は、こどもの立場でしか考えられないが、こどもは親に「守られたい」のではなく「愛されたい」存在なのだと思う。「守る」にはその動きを封じ込め、「愛する」には動きを解き放つ力がある。私自身、「あなたを守るためよ」と言われるより「やりたいようにやってごらん」と言われつづけてきた。親のそばにいようと離れていようと、日本にいようと海外にいようと、反対されることなく私を信じて見守ってくれた。そこにある愛は、いまでも日を追うごとに大きく感じられる。

「守る」と「愛する」が同じことだと勘違いすると、こどもにも親にも悲劇が起こるのではないかと思う。

自然は、自分を信じる力を宿してくれる

自然は、助けてくれない。
自然は、足元の凸凹。
自然は、水の冷たさと太陽の温もり。
自然は、枝葉のざわつく音と、音のない空間。
自然は、笹やぶと竹やぶ。
自然は、空に伸びる木と横に伸びる枝。
自然は、分厚い雪と雪に覆われた山肌。
自然は、獣の生きる場所。

雪を踏みぬくことなく歩いたり、枯れ枝が落ちてこなかったり、獣に襲われなかったり、雷に打たれなかったり。それはすべて、ラッキーなだけであって自然がそうしてくれたわけではない。自然は、そんなに気が利かない(笑)。

自然に身をおこうとするとき、信じられるのは自分しかいない。

凸凹に手すりはなく、笹やぶに道はない。
木に梯子はなく、雪に階段はない。
獣の気配は感じても、人の気配は消せない。

自分の感覚を研ぎ澄ませ、心に耳を澄ませる。
木に登り風を感じ、獣の気配に足音をたどる。
雪の斜面を転げ回り、冷えた体を太陽で温める。

「変化に富む」というより「変化しか存在しない」自然の中で、自分も自然だと感じる。体で感じる。その証拠に、遊びに法則などなく、体動くままにどんどん進化し変化しつづける。関わり合いの中で気持ちが揺れ動くとき、自分と他人の違いに気づき、自分は自分にしかコントロールできず、コントロールしないのもまた自分だと気づく。

自分の人生を生きる上で必要なことを、自然は教えてくれる。
こどもには、学びとる力が備わっている。
おとなのエゴで封じ込めてはいけない。

f:id:ikiikito:20150919135500j:plain